国立民族学博物館の特別展「舟と人類―アジア・オセアニアの海の暮らし」に行ってきた。
アジア地域や太平洋上の島々で使用された様々な舟の実物が展示されており、めちゃくちゃ見ごたえがあった。
単に舟を展示するだけでなく、その製作過程や実際の航海の様子などを収めた動画も各所で流しており、ここまでリッチな特別展はなかなかない。この前行った天理参考館も民芸品の製作過程や使用過程の動画を各所で流していたので、民族学において民芸品を集める際にそういった動画も収集することが学問として一般的なのかもしれない。
正直展示の内容としてはすべてが見どころって感じだったが、特に印象に残ったのが次の三点。
国立民族学博物館の3万年前の航海徹底際限プロジェクトの動画
こちらは動画のみで、コンパスを使わず天測のみで台湾から与那国島まで丸木舟で到達するという一連のプロジェクトの動画が流されていた。三日間、キャビンのない丸木舟でオールをこぎながら天測のみで移動するというのは、惰弱な現代人としてはかなり感心してしまった。
チェチェメニ号の航海
グアムとパプアニューギニアの間にあるサタワル島から沖縄まで3000kmの航海をしたチェチェメニ号の実物が国立民族学博物館には収蔵されており、今回の特別展でも展示されていた。

天体等を用いた伝統的な位置推定手法を使って帆走で沖縄海洋博会場までの長い航海を行ったというのは信じがたい。
図録の方には実際にこの航海を行うに至った経緯が書いてあった。
これらの航海については下記のドキュメンタリーとしてまとめられているらしい。いつか機会があったら是非見てみたい。
舟づくりの動画
展示で各所で動画が流されており、特にミクロネシアの島々でのシングルアウトリガー型のカヌーを作っている様子の動画がいろいろ流されていたが、Tシャツを着ており、カシオのデジタル時計を身に着けている人々が、カヌーの製作に関しては家内制手工業のように島の木材を使い、ヤシの実の繊維をほぐしてロープを作り、木材をロープで結んでカヌーを組み立てているというのは不思議な光景だと思ったし、勇気づけられもした。市場原理が地球上の隅々にまで行き届いているように思えても、それでも人はその複雑なサプライチェーンの力を借りずともモノを作ることができるということに。
今回の特別展の図録は河出書房新社から一般書籍として販売しており、内容が充実しているわりには図録として安く買えてかなりありがたい。
全体的にかなり見ごたえのある展示で2~3時間ぐらい見て回るのにかかるとみておいた方が良い。かなりいい展示だったので、出張のついでに見てこれたのはラッキーだった。